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自由と規律


ある番組のリサーチの一環でサルバドールダリのインタビューを翻訳したことがあった。ありとあらゆる質問に対してシュールレアリスムの作家サルバドールダリが生み出す回答は、徹頭徹尾わけのわからないものだった。大きなキャンバスを縦横無尽に飛び回る筆跡と同様に彼が生み出す言葉は、意味を持たずとも突然煌めいたり、突然どんより重くるしくなったりもした。それは終始子供の遊びじみていていい加減にしてくれと言いたくなるほど翻訳する僕をイラつかせた。ただインタビューの最後に自由とはなんですか?と聞かれたダリは「自由とは形の無いものだ」と初めて意味のある言葉を述べた。


僕はどちらかというと自由な身で自由な人生を歩んできた方だと思う。だから理解はできた。でも共感はなかなかできなかった。経済的な自由を与えられて僕は何を主体に生きていこうか逆に分からなくなった時代があった。そんな僕にとってもっともしっくりくる言葉をサン=テグジュペリが夜間飛行という小説の中で述べている。


I am especially grateful to him for bringing out a paradoxical truth which seems to me of great psychological import; that man’s happiness lies not in freedom but in his acceptance of a duty.


要約すると 「人間の幸福は自由ではなく、義務を受け入れることにある。」と語っている。社会性ある大人な見解だと思った。こんな言葉を声を大にして言えるかっこいい大人になりたいと思った。


夜間飛行という小説を一言で説明するなら「文明を築き上げるために果敢に挑戦してきた人々の儚さと勝利」についてを描いていると思う。郵便配達のために夜間飛行を繰り返す男たちが命がけのミッションを果たす。男たちにはそれぞれ地上で見守る大切な家族がいる。一機の飛行機が行方をくらます。ネタバレを避けるためにその先を記述するつもりはない。


自由と規律もしくは義務。そのバランスが大切だと思う。ダリもサン=テグジュペリも二人とも愛する家族に支えられながら自分の意思に基づいて作り出した己のルールの中で生き抜いた。自分だけの道を歩むこと、それは並大抵のことではないが願わくばそうした道を歩んでいきたい。


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